応答

コミュニケーションに欠かせない「応答」はなぜ難しいのか

 
 

 
ペクスのフェーズの中でも難しいと言われている「応答(コメント)」。
「応答(コメント)」とは、例えば子どもに「何が欲しいですか?」などと聞いて「○○ください」と答えてもらうこと。
「これはな〜に?」とか、「○○はどっち?」と聞いたりするのも同じ。
一見簡単そうに見えるやり取りですが、これってとっても難しいんです。
特に発達特性のある子にはとにかく難しい。
なぜなのでしょうか。
 
 

 
先日、ピアノレッスンには絶対に必要な「三項関係」について記事を書きましたが、まさにこの「三項関係」が確立・獲得できていないと「応答」もできないのではないかと思います。
ピアノレッスンでは、例えば「この音をこうやって弾いてごらん」とか、「こういう風に弾けるかな?」とか、「楽譜のここをよく見てね」など、ほとんどの場面において「三項関係」です。

「三項関係」とは、

  • モノ(強化子=おもちゃやお菓子などなんでも)
  • 講師
  • その子自身

この3つが存在する三角関係。
この三項関係が成立するのに、子どもはどういう発達段階を進んでいくのでしょう。
 
 

  
指差しは、「鍵盤を押してみる」という最初の行為に欠かせない動作です。
最初は指1本でいいと思うのです。そして「ここを弾いてごらん?」と先生がモデルをして、例えば「ド」の音を弾いてみる。その動作を真似してもらい、子どもが「ド」と人差し指で弾く。
とても簡単な行動ですが、発達特性の子はこの「指差し」ができないことがあります。
なぜできないんだろう?最初は私も不思議でしたが、最近読んだ論文で「指差しにも発達段階がある」ということが分かりました。
この「指差しの発達段階」の中に「応答」も出てきますが、「応答」は発達段階の最終段階でした。つまり、「応答(コメント)」は1番難しい過程であり、1番難しい動作であるということ。
「応答」の前に、「三項関係、二項関係」の獲得が必要なのです。
そしてこの「指差しの発達段階」は、発達障害の子は獲得が難しいということも書かれていました。つまり、もしかして「練習しなければ獲得できない」かもしれないということになります。
 
 

 
最初の方の「指差し」は、自分の興味、関心のあるものに対して「欲しい!」と思いながらただ指差すだけの動作。(これは第2段階で最初のステップではありません。最初のステップはここでは省略します)
ペクスのフェーズで言うと、「自発要求」の段階なのでフェーズ1です。
ここができるようになる時点では、本来ならば「二項関係」の状態。
二項関係とは、

  • モノ(強化子=おもちゃやお菓子などなんでも)
  • その子自身

の2つですが、ペクスではそこが「三項関係」になるように絵カードをCP(コミュニケーションパートナー)に手渡すようになっています。
ここが、三項関係の獲得のために必要なところですね。
 
そして指差しの「第3段階」を過ぎると、今度は子どもは「質問の指差し」をするようになるのだそうです。
「質問の指差し」とは、講師側から子どもに質問することではなく、子ども側から講師や親に「これな〜に?」などと質問しながら指差しすることです。
実は当教室の生徒さんの中には、これらの「質問の指差し」や「三項関係」ができていないなと思うお子さんが数人いらっしゃいました。(診断ありの子)
そしてその子は、「指差しの発達段階」の最終ステップである「応答(コメント)」も、できていなかったのです。
と言うことはつまり、この「質問」ができないと、次の最終段階である「応答(コメント)」へのステップにもあがれないのではないか?そう考えたのでした。
 

 

 
発達特性の子は、「指差しの発達段階」をうまく獲得できない子が多いようです。(全員ではありません)
この「指差しの発達段階」の獲得がなぜできないのかは、個々により違うと思いますが、当教室では先日、「ペクスのフェーズからは一脱してしまう(ペクスのフェーズにおいては「質問」という実践は行っていないので)」のですが、「質問も練習してはどうか」と考え、その子には強化子をあげつつ「質問してもらう」練習をしてみました。


練習の仕方はいたって簡単。その子が知らないであろう絵カードと強化子を用意して、子どもの方から講師に「これはなんですか?」と「質問」をしてもらいます。
 質問された先生は、「これは○○です」と答えてあげるのですが、ここでのステップは「子どもには質問をしてもらいたい」ので、上手に質問することができたら、すかさず「褒めて、強化子をあげる」という活動を繰り返し行いました。
 
レッスンを行って3回目。だいぶ上手に「質問」ができるようになりましたので、今度は逆に講師側から「これはなんですか?」と聞いてみました。すると・・・「これは、○○です」と答えられるようになったのです。
念のため、もう何度か繰り返します。質問してもらい、応答してもらう。数回繰り返しましたが、すべての試行の中で98%上手に質問と応答をするができました。
 
おそらくですが、子どもは「質問をする」という経験をしなかったから、「応答」ができなかっただけではないか?
「質問」したら「応えてくれる」という経験をさせてあげることで、「逆に質問されたら応える」という必要性を感じた?のではないか?と考えます。
「質問」は、第三者がいなければできませんから、まさに「三項関係」の獲得にも繋がります。
そしてその三項関係の「応答(コメント)」も第三者が絡んできますから、「応答(コメント)」の前には、やはり質問が大事なのだろうなと改めて実感したレッスンでした。
 
 

 
そのレッスン終了時に親御さんにフィードバックをさせていただきました。
「質問の練習をたくさんしたので、逆に質問してみたら、上手にお返事してくれました」と言いましたら、
「先生が質問の練習をしてくださってから、急に成長して、最近学校でも家でも質問に答えてくれたり、自発要求も増えたんです」とおっしゃってくれました。
これはとても嬉しいご報告です。
今後は、さらに踏み込んで「上手な姿勢はどれかな?」「上手な手の形はどれかな?」など、様々な場面で「応答(コメント)」を入れていきたいと思います。
 
 



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